テレビなどでよく見かける鍼治療。
「あんなに鍼を刺して痛くないの…?」
と疑問に思われる方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、鍼灸院で使われている鍼について、
その太さや材質など詳しくご紹介していきます。
鍼の一本一本には痛みの軽減や衛生面といった点で様々な工夫がされているので、
「鍼に挑戦してみたいけど少し不安…」という方は
ぜひ参考にしてみてくださいね。
【目次】
1.鍼の種類って?
2.鍼には痛みを抑える工夫がたくさん
3.さいごに
1.鍼の種類って?
そもそも鍼治療とは、中国の伝統医療で使用された技法で、ツボ(経穴)を鍼で刺激して気血の流れを良くすることで本来の免疫力や自然治癒力を高めていく施術のことです。
この鍼治療に使われる鍼には大きく「和鍼(わしん)」と「中国針」の2種類があり、このうち日本で広く使われている和鍼は中国針に比べて細くて短いもの多く、比較的痛みが少ないとされています。
では、具体的にどのくらいの太さなのでしょうか。
みなさんに馴染みのある注射針と比べてみましょう。
注射針の太さは、一般的に約0.7mm~0.9mmです。
採血や予防接種などの時には、明らかに皮膚に針が刺さった感覚が分かりますよね。
一方で鍼灸の針は0.1mm~0.3mmの範囲が多く使用され、最も細いもので注射針の5分の1ほどしかありません。
髪の毛の太さが約0.1mmほどとされているので、イメージがつきやすいかもしれませんね。
これほどの細さですから、軽くチクっとする感触はたまにありますが、注射針のように刺されたような感覚はないでしょう。
さて次に、鍼はどんな材質でできているのか少しご紹介します。
鍼の材質には、主に金・銀・ステンレスが使われますが、一般的に使われる鍼はステンレス製が多く占めています。
金・銀を含む鍼は柔らかくて弾力性が高く、刺す時の痛みが少ないのが特徴ですが、ステンレスより高価で酸化・腐食しやすく耐久性に劣ります。
一方、現在広く使われているステンレスの鍼は、刺入がしやすく、折れにくいというメリットがあり、比較的安価な鍼となっています。
さらにいえば、ステンレス製でいて、且つディスポーザブル(使い捨て)の鍼というのが一般的です。
また、「完全滅菌」をされているので、衛生面でもとても安心できるのです。
2.鍼には痛みを抑える工夫がたくさん
一見痛そうな鍼灸の鍼ですが、様々な面で痛みを軽減する工夫が施されています。
まずは鍼の太さ。前述のとおり、注射針のおよそ5分の1程度しかありません。
そのため、皮膚に刺したときの抵抗が非常に少なく、痛みをほとんど感じないのです。
さらに、鍼の先端にも特徴があります。
注射針は、皮膚や血管を破って進むために先端がナイフのようにカットされています。
これは、注射針は薬剤を注入したり、血液を採ったりするのに適する為に「袈裟切り」状になっているのです。
これに対して鍼灸の鍼は、皮膚や筋繊維をかき分けて進めるように先端が少し丸みを帯びています。よく「松の葉」に例えられますが、
この丸みによって抵抗が少なくなり、スムーズに内部へ入っていくため、痛みが軽くなるという仕組みなのです。
また、鍼そのものだけでなく、打ち方にも工夫があります。
中国針の場合、撚鍼法(ねんしんほう)といって、鍼を直接持ってそのまま皮膚に打ち込んで刺していきます。
一方、日本で広く使われる和鍼は、管鍼法(かんしんほう)という方法で鍼を刺します。
つまり、細い管(鍼管)に鍼を挿入して皮膚に当て、頭の部分をトントンと弾くようにして皮膚に打つ方法です。
これにより鍼は瞬間的に皮膚を通過するため、痛みを最小減にすることができるのです。
実はこれは日本独自の手法であり、江戸時代に確立されたもので、当時徳川将軍付きの鍼医(当時は鍼医といわれました)である、我々鍼灸師の大、大先輩の“杉山和一”先生が盲目であった為に編み出した手法だと語り継がれています。
そして、この鍼管にもひと工夫が。
従来品は切断面を切りっぱなしにしていたため、角が立って肌に触れたときに違和感がありました。
そこで皮膚に直接触れる管鍼の切断面を丸く整え、加えて厚みをもたせることで肌触りが良くなっているのです。
3.さいごに
今回は鍼灸院で使われている「鍼」についてご紹介してきました。
細く小さな鍼の一本一本に、できるだけ痛みを抑える工夫がたくさん施され、そして未だ日々研究され進化をしていますので、鍼治療に不安を抱いている方も、安心して鍼灸治療を受けて頂けるのです。
【参考】
セイリン株式会社
http://www.seirin.jp/
看護roo
https://www.kango-roo.com/sn/k/view/2686