皆さんこんにちは。長くキツかった猛暑もようやく去り、今は逆に肌寒い日が続く様になって来ましたが、お変わりなくお過ごしでしょうか!?
さて、今回はたくさんの女性が経験されている、或いは今もそれが悩みの種…という“PMS”について、自律神経機能との関係や整え方を、やさしく分かりやすくご説明していきたいと思います。
PMSとは…?

PMSは「月経前症候群(Pre-Menstrual Syndrome)」の略です。簡単に言うと、生理(月経)が始まる前、だいたい3日〜10日くらいの間に起こる、心と体のさまざまな不調のこと。これらの不調は生理が始まると自然に治まるか、軽くなるのが特徴です。人によって症状の出方や強さ、期間は異なります。
どんな症状が出るの?

症状は人によって、また月によっても異なり、200種類以上あるとも言われます。主には次の二つに分けられます。
心の症状(メンタル)
- イライラ、怒りっぽくなる
- 気分の落ち込み、憂うつ感
- 不安や焦燥感、急に涙が出る
- 集中力の低下、判断力の低下
- 眠気/不眠などの睡眠障害
身体的な症状(フィジカル)
- 頭痛、肩こり、腰痛、下腹部痛
- 胸の張り・痛み
- むくみ、だるさ、疲れやすさ、冷え
- 食欲の増減(特に甘いものを欲する)
- 肌荒れ、ニキビ、便秘/下痢 など
なぜ起こるの?ホルモンと自律神経の関係

実はPMSのはっきりとした原因はまだ解明されていません。ただ、多くの研究や臨床現場の実感から、女性ホルモンの急激な変化が大きく関係していると考えられています。排卵から生理が始まるまでの黄体期に、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)が大きく変動し、それが心身の不調を引き起こす引き金になるのです。
ここでポイントなのが、自律神経との位置関係。ホルモンと自律神経は、どちらも脳の「視床下部(ししょうかぶ)」という同じ部位でコントロールされています。視床下部は「自律神経のバランス(興奮=交感神経/リラックス=副交感神経)」と「女性ホルモンの分泌」という、からだの司令塔のような役割を担っています。
そのため、生理前にホルモンが急に増減すると、この司令塔が刺激(あるいは混乱)を受け、自律神経のバランスまで乱れやすいのです。
PMS期に起こる自律神経の乱れ

自律神経には、身体のアクセル役である交感神経と、ブレーキ役である副交感神経の2種類がありましたよね?
PMSの時期(排卵後〜生理開始まで)は、ホルモン変動の影響で交感神経優位になりがち。すると次のような連鎖が起こりやすくなります。
- イライラ・不安感:交感神経が過緊張 → リラックスしづらい
- 睡眠障害:夜になっても“オフ”に切り替わりにくい → 眠りが浅い/入眠に時間
- むくみ・冷え:交感神経優位で血管が収縮 → 血流低下
- 頭痛・肩こり・動悸:筋緊張や血行不良、過覚醒が関与
つまり、ホルモン変動 → 視床下部 → 自律神経 → 全身症状というルートで、PMSのつらさが表に出やすくなるのです。
自律神経失調症とPMSは違うの?

よく似た症状が出ますが、決定的に違うのはタイミングです。
- PMS:女性ホルモンの急激な変動により**月経前(約3〜10日前)**に現れ、月経開始とともに軽減・消失。
- 自律神経失調症:ストレスや生活習慣の乱れ等が影響し、時期に関係なく長期的に続く(検査で明確な異常が出にくい)。
つまりPMSは「生理周期と連動して起こる自律神経の乱れ」と捉えるのが分かりやすいでしょう。もちろん日常のストレスや過労が重なると、PMSはさらに悪化しやすくなります。無理は禁物です。
Q&Aのコーナー!
厚生労働省等のデータでも、多くの女性が月経前にイライラ・だるさ・眠気など何らかの不調を感じると報告されています。ここでは、よくある疑問にQ&A形式で簡潔にお答えします。
Q1. PMSと自律神経はどうつながっているの?
A. 女性ホルモンの分泌を司る視床下部は、自律神経も同時にコントロール。生理前のホルモン変動が視床下部を刺激すると、交感神経と副交感神経のバランスが崩れ、心身の不調が現れやすくなります。
Q2. 自律神経の乱れでPMSは悪化する?
A. はい。ストレス・睡眠不足・過労などで自律神経が乱れていると、ホルモン変動の影響をより強く受け、イライラ、不安、不眠、頭痛などのPMS症状が増幅しがちです。
Q3. 自律神経が乱れると出やすいPMS症状は?
A. 精神面:イライラ、怒りっぽさ、不安感、抑うつ、涙もろさ、集中力低下
A. 体の面:頭痛、肩こり、めまい、動悸、冷え・むくみ、倦怠感、寝つきが悪い/日中の強い眠気 など
Q4. PMSと自律神経を日常で整えるコツは?
A. 3つの柱で考えると実践しやすいです。
① 食事の工夫(血糖と神経の安定)
- 甘いもの・カフェイン・アルコールを控える(自律神経を刺激/血糖の乱高下を招く)
- カルシウム・マグネシウムを意識(乳製品、小魚、ナッツ、海藻)
- 欠食を避け、規則正しい食事で血糖の安定 → 情緒も安定しやすい
② 運動とリラックス(副交感神経をON)
- ウォーキング、ストレッチ、ヨガなど軽い有酸素運動
- 深呼吸・瞑想・呼吸法で心身の緊張を解除
- **ぬるめの入浴(38〜40℃)**でゆっくり温まる
③ 睡眠とストレス管理(回復の土台)
- 夜更かしを避け、7時間前後の睡眠を目安に
- 就寝前1時間はスマホ・PCを控える、照明を落とす
- 無理をしないスケジュール設計(PMS期は家事・仕事の負荷を軽く)
- 月経カレンダーやアプリで体調記録 → 自分のパターンを把握
鍼灸師が教える整え方のコツ
PMSの出やすい生理の約2週間前(排卵後)から、上のセルフケアを意識的に強化すると効果的です。さらに鍼灸の視点からは、以下のポイントをおすすめします。
- からだ全体の血行改善と筋緊張の緩和
- 自律神経の過覚醒をクールダウンし、副交感神経を働かせる
- 冷え対策(骨盤周り・下肢の循環アップ)でむくみ・痛みを軽減
おうちケアの一例:三陰交(さんいんこう)への温熱ケア
月経開始約1週間前から、寝る前に市販のお灸などの温熱ケアを片足3壮ずつ試すのも一案です(※必ず説明書に従い、火傷とやり過ぎに注意)。冷え・むくみ・イライラの緩和を実感される方も少なくありません。皮膚の弱い方や疾患のある方は無理をせず、専門家へご相談ください。
生活シーン別:PMS × 自律神経セルフケアの実例
- 在宅ワークの日:午前中に10分の外気浴+軽いストレッチ/昼食後に軽い散歩/夕方は湯舟で温める
- デスクワークの日:60〜90分ごとに立ち上がって肩・股関節を回す/目の温罨法で副交感神経ON
- 眠りが浅い日:就寝90分前に入浴→白湯→照明を暗めに/呼吸4-7-8法で入眠儀式
- 甘いものが止まらない日:たんぱく質+食物繊維を先に摂る/間食は素焼きナッツやチーズ少量に置換
医療機関に相談する目安
もし症状が重く、日常生活に支障が出るようであれば、我慢せずに婦人科(産婦人科)など専門の医療機関へ相談を。特に精神的な不調が非常に重い場合は、月経前不快気分障害(PMDD)として専門的な治療が必要になることもあります。自己判断で無理を重ねず、早めの受診を心がけましょう。
最後に:PMSは“我慢するもの”ではありません

当院にいらっしゃる女性の多くが、月経に関わる不調(PMS、生理痛、冷え、不眠など)を抱えています。はじめは眼精疲労・肩こり・頭痛・腰痛・不眠などで通われていても、からだ全体の巡りが整ってくると同時に、
- 「鍼灸を始めてから月経が軽くなった」
- 「毎月欠かせなかった痛み止めの回数が減った」
- 「憂うつ感が減って、来週鍼灸に行けると思うと安心できる」
といった声を多くいただきます。
PMSでお悩みの方は、どうか一人で抱え込まず、身近な鍼灸院(鍼灸専門院)や医療機関に相談してみてください。あなたのお話に耳を傾け、自律神経とホルモンの両面から、無理のない改善へと伴走してくれるはずです。
まとめ PMSと自律神経を理解して、毎月をもっと軽やかに

- PMSはホルモン変動が引き金となり、自律神経の乱れを通じて心身の不調を生みやすい
- 生理前は交感神経優位になりやすく、イライラ・不眠・冷え・むくみ等が出やすい
- 食事・運動・睡眠・ストレス管理の見直しで、自律神経を日々ケア
- 鍼灸・温熱ケアは自律神経と血流の両面に働く実践的アプローチ
- 症状が重い/長引くときは婦人科へ。PMDDの可能性にも留意を
PMSと自律神経の関係を知ることは、からだとこころの“取扱説明書”を手に入れること。無理をせず、できるところから少しずつ整えていきましょう。